kaminarigumo

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REPORT

2025.08.09

"カミナリグモ MELODY TOWN TOUR
“Scrappy Unplugged Quartet”"

- 三軒茶屋 GRAPEFRUIT MOON -

SETLIST

01.つぎはぎバルーン
02.Miniature Lamp
03.こわくない
04.あいにいくよ
05.月と街灯
06.真夏のスコール
07.MY FILM
-MC-
08.December
09.ハローメロディ
10.ミッドナイトヘッジホッグ
11.王様のミサイル
-MC-
12.メロディタウン
13.アイスグリーン
14.Graffiti on my desk
15.Rusty or Shiny?

en01
シンガー
ゆらゆら魔法が溶けただけ

en02
20号

*配信アーカイブ【8/23(土)迄】
https://premier.twitcasting.tv/c:grapefruitmoon_/shopcart/388405

DISCOGRAPHY

SPECIAL LIVE REPORT
取材/文:浅野保志(ぴあ)

7thアルバム『MELODY TOWN』をリリースしたカミナリグモは、7月のリリースに前後して実に多彩なスタイルのライブを11月まで敢行中だ。リリース前の7月13日にはクボケンジ(メレンゲ)との対バン形式で“Purely Piany Night”を開催。続いて東名阪ツアー・スタイルで ”Scrappy Unplugged Quartet”と題したアンプラグド・ライブを開催した。こちらのメンバー4名のリリースとツアーに向けた座談会は「MELODY TOWN」特設サイトに「前編」「後編」に分けて掲載されている。続いて9月からは10月にかけて全国各地、ゆかりアーティストを招いて廻り、11月29日にバンド形式のワンマン”Scrappy Rusty Shiny Band”でファイナルとなる。

今回は、8月9日に三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONで開催されたアンプラグド・ツアー最終日のライブ・レポートをお届けする。

私事で恐縮だが、僕がカミナリグモのおふたりと出逢ったのは、2010年、メジャー・デビュー・シングル「ローカル線」がリリースされる少し前。リリースされていた音源を聴いて、「王様のミサイル」「春のうた」「夕立のにおい」など曲の完成度の高さ、啓示さん(上野啓示)の哀愁に満ちた歌声、ghomaちゃん(成瀬篤志)のキーボードプレイとアレンジ能力に強く魅かれたのを今でも覚えている。その後のカミナリグモ史をずっと体感し、リリースやライブに欠かさず触れさせてもらった。活動休止のときも、啓示さんのソロ「かけらフィルム」、10周年や15周年で凝った企画やゲストを迎えての活動も、ずっと「推し活」させてもらった。積み重ねてきた歴史が、現在のカミナリグモの奥深い世界観に効果的な影響を及ぼしていることを実感する。ご指名いただいて(前述した)「座談会」の司会をやらせてもらった僕としては、このツアーが観れたことにワクワクが止まらない。

この東名阪3公演は全てソールドアウトとなり、この日は配信も行われるほどの盛り上がりをみせた。会場に入るとお馴染みのカミナリグモ・ロゴのネオンサインと旗が飾られ、正面にドラムとアコースティックギター、右にはレトロな色彩のアップライトピアノ、左にはバンドのステージではあまり見慣れないアップライトベースがセッティングされている。

啓示さん、ghomaちゃん、キャノンさん(菅野信昭/FoZZtone)、源さん(大岡源一郎/LOST IN TIME)の4人が登場。「つぎはぎバルーン」「Miniature Lamp」と7thアルバム冒頭の2曲が奏でられる。でも実はアルバムで演奏したリズム隊は別のミュージシャンで、このアンプラグド編成とは違うアレンジなのでまた新たな発見がある演奏だった。普段のライブではキーボード、リズムの打ち込み、シンセサイザーなどを駆使するghomaちゃんが、ピアノ1台だけで曲に色付けしていくプレイにも圧倒された。続く3曲目は「こわくない」(2010年リリース2ndアルバム『BRAIN MAGIC SHOW』収録)。MCで啓示さんは、このツアーを通じて互いの呼び名も変わったほど距離感が近くなったと語る。続く「あいにいくよ」は7thアルバム収録曲で、レコーディングでもキャノンさん、源さんが演奏した楽曲だが、活動初期に作られた未発表曲で、哀愁のある朴訥とした旋律が秀逸だった。「月と街灯」(2022年リリース6thアルバム『Another Trip』収録)ではキャノンさんが指ではなく弓でベースを弾き、源さんはこれまで竹スティックやブラシで曲に合ったリズムを刻んでいたがこの曲では先に綿帽子のようなヘッドのついたマレットで壮大なアレンジにひと役買っていた。続く「真夏のスコール」(2009年リリース ep「夕立のにおい」収録)も夏を意識した選曲だろうか。「MY FILM」も7th収録だが、真鍋吉明とのコラボ曲のセルフカバー。近年の真鍋のソロプロジェクトNINE MILESとのコラボも啓示さんの中で注目を集める活動だけに、この編成の演奏もとても味わい深かった。

次のMCで啓示さんはキャノンさんが弾くアップライトベースについて触れ、「これを弾くのが凄いよね」と振るとキャノンさんいわく「ghomaさんが“これで弾け!”って」と強いお達しがあったことが明かされる。「今回のツアー“キャンちゃん(菅野)ありき”のところがあるからさ」と全幅の信頼を寄せている様子だ。「源さんも器用だよね。スティックを曲によって変えてくれて。LOST IN TIMEでアコースティックのライブを観ていたから、引き出しが多くてすごく助かってます」と、この編成でファイナルなのが名残惜しそう。続いて演奏する「December」のギターは、レコーディングでは三井律郎(LOST IN TIME)がプレイしていて、弾くのが難しいことを、エピソードを交えて語って笑いを誘った。続く「ハローメロディ」はHey! Say! JUMPに提供した曲のセルフカバー。こちらもベースは弓、ドラムはマレットで雄大なメロディを生き生きと引き立てた。「ミッドナイトヘッジホッグ」は啓示さんの哀愁に満ちたボーカルでセンチメンタルな気持ちになった。サビの“ほんとは救われていたんだ ありがとう ごめんね”のフレーズが染みる。

続く「王様のミサイル」(2008年リリース1stシングル)には泣いた。僕がカミナリグモと出逢った頃は、戦後生まれの僕らにとって「戦争」は「過去」のもので、二度と起こってはならないという想いでこの曲を聴いていた。ところが、今は戦争のニュースが毎日のように各地から届き、“むしゃくしゃして王様はミサイルを投げた”“たとえ1秒で 数億人を殺すミサイルでさえ”という歌詞が、具体的な国や指導者に当てはまってしまう現実に言葉を失う。ましてこの日は長崎に原子爆弾が投下されて80年。“たとえ憎しみは繰り返し この世からうたが消えても それはやがて 花を咲かし 思い知る日が来るんだろう”。この曲が放つメッセージに希望を託したいと強く思った。自分がずっと好きだったアーティストやバンドがその歩みを止めることも増えてきて、それでも曲はいつまでも生き続けると信じたいと強く思った。

改めてメンバー紹介。ツアーで印象に残っている出来事をそれぞれ語りあった。それを受けて啓示さんは「ツアーで何本も一緒に廻ると楽しいし、それぞれの一面がみれるし、ツアーはまたやりたい」。ghomaちゃんも「この編成のツアーが終わってしまうのはもったいない」と口を揃えた。重ねて啓示さんが「カミナリグモの小さな音楽の世界に、みんな居続けてくれて、もしくは新しく足を踏み入れてくれて、そのおかげでこの小さな世界が続いています。感謝してます」と語った。アルバム・タイトル曲「メロディタウン」で、観客にサビの後のコーラスを一緒に歌って欲しいと促した。続く「アイスグリーン」(2011年リリース2nd EP『SCRAP SHORT SUMMER』収録)も夏の終わりの切なさを見事に表現した名曲だ。“明日 僕ら 会えなくなる さみしくなる 泣かないで”。シンプルな想いがまっすぐ心の奥底に染み渡る。続いて7thに収録された2曲「Graffiti on my desk」「Rusty or Shiny?」を軽やかに溌剌と連投して本編が終了した。

鳴り止まない拍手に促されてアンコール。啓示さんが「いろんな形でツアーが続いていくので、またどこかで会えたら嬉しいです。みんながいる限り歌い続けていきます」と語ってアルバム最後に収録されている「シンガー」を披露。“うたうよ キミが笑うまで うたうよ キミが好きだから”。しっかりと想いを受け止めた気がした。ビートが刻まれて、ピアノが重なり「ゆらゆら魔法が溶けただけ」だ。この曲、2005年に発表された上野啓示ソロプロジェクト時代の自主製作盤にも収録されている彼らの原点のひとつ。20年以上の時を経て会場中に拍手を生み出すパワーに圧倒される。ghomaちゃんのアタックの強いピアノ・プレイも圧巻だった。

収まらない情熱に満ちた拍手、歓声に促されて、啓示さん、ghomaちゃんのふたりが再登場。「20号」(2010年リリース2ndアルバム『BRAIN MAGIC SHOW』収録)を、原曲より少しテンポを落としてしっとりと弾き語ってツアーを締めた。

このステージを観て感動したひとつは、アンプラグド編成のバンドの仕上がりだった。7thアルバムに収録された11曲を全曲盛り込み、バンド史の中でこの編成と時期に合う曲を見事に織り交ぜた全18曲のセットリストを、巧みな技術と阿吽の呼吸で、ボーカルが最大限引き立つアレンジで演奏したステージに、時を忘れて魅了された。そして改めて曲の持つ表現力の高さが素晴らしかった。啓示さんいわく「小さな世界の音楽」かも知れないが、ファンにとって日々のたいへんさや、ニュースで流れる理不尽な出来事も、カミナリグモの音楽に気持ちを預けるときには救われる瞬間があるのでは、と感じた。まだまだ続くツアーで、コラボするアーティストとのケミストリーやその土地土地で耳を傾けるファンの想いを積み重ねて、11月末のファイナルではまた新たな感動を届けてくれるに違いない。

取材/文:浅野保志(ぴあ)

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